呼吸器疾患について
当院では、気管支喘息や睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患の診療を行っております。これらの疾患は、咳や息苦しさ、日中の眠気など、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。患者様の症状や生活習慣に応じて、適切な検査・診断を行い、継続的な管理・治療をご提案いたします。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
気管支喘息
気管支喘息は、気道の慢性的な炎症によって引き起こされる疾患で、発作的に呼吸が困難になるのが特徴です。この疾患は、アレルギー、感染、運動、ストレス、天候の変化などのさまざまな要因によって症状が悪化します。子どもから大人まで幅広い年代で発症し、適切な管理と治療によって日常生活の質を向上させることが可能です。
症状
気管支喘息の主な症状には、次のようなものがあります。
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咳:特に夜間や運動後に悪化することが多いです。
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喘鳴(ぜんめい):呼吸時にヒューヒューやゼーゼーという音がします。
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息切れ:軽い運動や階段の上り下りでも息苦しさを感じることがあります。
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胸部の圧迫感:胸が締め付けられるような感覚を伴うことがあります。
これらの症状は個人差があり、症状が軽い時期と重い時期を繰り返すことが一般的です。
診断
気管支喘息の診断は、以下の方法を組み合わせて行います。
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問診:症状の詳細や発作の頻度、誘因を確認します。
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呼吸機能検査:スパイロメトリーで気道の状態を評価し、喘息の特徴的なパターンを調べます。
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アレルギー検査:アレルギーが原因となる場合には、血液検査や皮膚試験を行います。
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治療薬の反応性確認:気管支拡張薬や吸入ステロイド薬による症状の改善を観察します。
これらの検査を通じて、気管支喘息であるかどうか、また重症度を判定します。
治療
気管支喘息の治療には、長期管理と急性発作の対処の2つの柱があります。
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長期管理
吸入ステロイド薬や長時間作用型気管支拡張薬を使用して、気道の炎症を抑え、発作を予防します。これにより、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。これまでの古い治療では、どのような吸入薬を使用しても改善しない、ほかの経口薬剤併用でも安定しない喘息に対しては内服や点滴でのステロイド投与を行っておりました。しかしながら、内服や点滴のステロイドを長期間継続してしまうと、消化性潰瘍(いわゆる胃潰瘍や十二指腸潰瘍)・糖尿病や骨粗しょう症・易感染性(病原体への防御が弱まることで感染症にかかりやすくなってしまう)のほか、精神的な症状の出現も起こりえます。お若い方であればあるほど、難治例である場合には経口ステロイドによらない治療として、生物学的製剤(2-4週間ごとの皮下注射薬)での治療により、劇的な症状の改善や、経口ステロイドの用量を減量することができるとされております。当院ではそのような生物学的製剤での治療経験も非常に豊富な専門医による治療が可能です(十分な経験のある施設での導入を強くお勧めします)。
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発作時の治療
発作が起きた場合は、短時間作用型気管支拡張薬や点滴でのステロイド投与を検討します。重症の場合は酸素投与のみならず人工呼吸管理を要する状態となる場合もあります。また、発作回数が多い方は徐々に難治となり、完全に呼吸機能が改善しない状態となることもあるため、発作を起こさない管理が重要です。
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生活指導
喘息の発作は、環境による誘因もあります。アレルギー性鼻炎や動物アレルギー、花粉症などをお持ち患者様へは環境調整の指導や、アレルゲン免疫療法(ダニ・スギに感作されている方が現時点では舌下免疫療法が保険適応です)の導入も行います。また、喘息に対する最も重要な治療である吸入治療に関しては、正しく吸入を行えていないケースも散見されますので、適切な吸入薬の使い方の指導も重要です。
受診のすすめ
気管支喘息は、適切な治療によって発作を予防し、生活の質を維持することが可能です。しかし、治療を怠ると症状が悪化し、命に関わる場合もあります。夜間の咳や息切れなどの症状がある場合や、現在の治療で十分に効果が得られていないと感じる場合は、早めに受診し、適切な管理を行いましょう。当院では、専門医による診断と治療、生活指導を行い、患者様一人ひとりに合わせたケアを提供しています。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し停止または減少する疾患です。この状態は、気道の閉塞や脳からの信号の異常が原因で起こり、夜間就寝中の睡眠が障害されることで十分に脳や体が休まらず、様々な他の疾患(高血圧症, 脳梗塞・脳出血, 心筋梗塞, 糖尿病など)につながってしまう疾患です。自覚症状は乏しいケースもありますが、一般的には以下のような症状を引き起こすことがあります。
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昼間の強い眠気
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夜間就寝中のいびき
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夜間就寝中の覚醒や息苦しさ
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日中の集中力の低下
前述の通り、SASは心疾患・高血圧・糖尿病・脳卒中の他、交通事故のリスクも高めるため、早期の診断と治療が重要です。SASのある患者においては脳卒中や心筋梗塞のリスクが、SASではない人と比べると2-3倍に上昇するという研究結果が報告されており、積極的な治療で後遺症を残す疾患に至らぬように予防を図ることが重要です。
日本国内ではおおむね全人口の20%程度にみられるとする報告もあり、治療を要する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の85%の方は未診断とされており、早期診断と治療が望ましい疾患です。
診断
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問診
ご本人やご家族から、いびき、就寝中の無呼吸エピソード、日中の眠気などの症状を確認します。日中の眠気の評価尺度として、エプワース眠気尺度(Epworth sleepiness scale:ESS)というものがあり、こちらから調べてみることができます。11点以上の方は日中の強い眠気があると考えられますので、下記検査へ進むことをお勧めします。
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簡易検査
自宅で行える携帯型装置を使用して、睡眠中の呼吸状態をモニタリングします。当院では大体2泊自宅で検査実施いただき、結果説明を行っております。検査費用は3割負担の方で2,700円(2割で1,800円 1割で900円)となります。こちらに受診にかかわる費用が別途少額かかります。
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精密検査(終夜ポリソムノグラフィー)
専門医療機関で、睡眠中の脳波、眼電図(眼球運動をみます)、筋電図(筋肉の活動をみます)、呼吸と酸素飽和度(換気がなされているか)、心拍数などを詳細に記録します。この検査により、無呼吸や低呼吸の頻度(AHI:無呼吸低呼吸指数)を確認し、重症度を評価します。検査費用は医療機関により異なりますが、1-2泊の入院かつ個室での検査を要するため、簡易検査と比較しますと数万円~とやや高額となってしまいます。
治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、症状の重症度や原因に応じて異なります。
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生活習慣の改善
軽症の場合、以下の生活習慣を見直すことで症状が改善することがあります。
・減量(肥満が原因の場合)
・お酒や睡眠薬の摂取制限
・あおむけで寝ることを避ける(横向きで寝る工夫)
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持続陽圧換気療法(CPAP:シーパップ)
中等症以上の場合、CPAP(シーパップ)と呼ばれる装置を使用します。この装置は、睡眠中にマスクを通じて気道に空気を送り込み、気道の閉塞を防ぎます。CPAPは高い効果が期待できますが、継続して使用することが重要です。
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口腔内装置(マウスピース)
軽度から中等度のSASに有効です。歯科医が作成する専用の装置を就寝中に装着し、下顎を前方に保持して気道を広げます。
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手術
気道の閉塞が解剖学的な異常に起因する場合、手術を検討することがあります。例として、扁桃腺の摘出や気道を広げるための手術が挙げられます。
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薬物療法限られた特定の原因や症状に対して薬物療法を補助的に用いることがあります。ただし、SASの根本的な治療としては主流ではありません。
著しい肥満などが原因である場合を除いて、多くのSASは治癒する疾患ではなく、治療は継続が重要であります。治療を行うことで、前述の脳卒中や心筋梗塞発症のリスクはSASがない人と同程度まで下がるとされており、継続が重要であります。なお、治療により高血圧や脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)、糖尿病の状態も改善するケースが多く、なかなか下がらない血圧やよくならない糖尿病などについても疑って検査、治療を行うことが望ましいと考えられます。
保険適応として簡易検査での無呼吸低呼吸の指数(通称AHI)が40以上であればポリソムノグラフィ(PSG)を行わずにCPAPの導入が可能ですが、簡易検査でAHIが20以上40未満の軽症~中等症SASについてはCPAP導入にはPSGでの検査を要します。
CPAP療法の費用については3割負担で受診料など含めて4,000~5,000円程度(2割負担で3,000~4,000円 1割負担で1,500~2,000円程度)となりますが、かかっている他のご病気やオンライン診療か対面診療かなどで前後しますので、受診の際にご確認ください。